SOGO SEIBU TransCulture

A21 小野川直樹 -これまで と これから- 自然の脅威や恵みを生物としての樹木に

– 折り鶴との歩み –

『平和のために折り鶴を折る』ということに違和感を抱いたのは、最近のことではありません。よく「折り鶴は平和の象徴」と耳にします。戦後、折り鶴は広島や長崎に送られていますが、毎年何トンという膨大な量が届くのだそうです。彷徨っている気持ちの吐き場所であり、その繰り返されている惰性のようなものに違和感を感じるのです。平和を願う気持ちというものはとても尊重しています。しかし、そこには自分と折り鶴とをつなぐものや、自分の考える折り鶴の「居場所」というものは、ありませんでした。幼少期のころに熱中した折り紙。その中でも特に有名な伝承折り紙の一つである「折り鶴」。そこに自分の軸になるものと共に、「なにか」があると感じています。2011年に東北で震災がありました。翌年の4月に岩手県陸前高田へと赴き、現地の方の話を聞き、実際に町を見て回りました。自然の脅威の前では人間は何もできないのだと恐ろしく、また、その中で輝く生命の力強さに感銘も受けました。いつの時代も、人種も性別も社会的地位も関係なく襲ってくる自然の脅威と向き合い、しかし時にあやかり、共存しているのだと改めて感じます。そしてその体験は同時に、いまを生きている、ということをハッキリと意識させられるようです。そのような中で、津波に流された校舎の瓦礫脇に置かれた千羽鶴を見て、ハッとしました。それまでの折り鶴に纏わりつく、平和と戦争とは何の関わりもない場所に存在する折り鶴に対して、なぜか腑に落ちてしまったからです。それはまるで行き場のない気持ちを折り鶴に託し、この世ではない場所を行き来するようにと祈りを込めた孤独な儀式のようでした。うまく言葉では表現できませんが、今、折り上げている折り鶴はそういった厳かな「祈り」から来ているものなのかもしれません。またその様なことを作品に落とし込むことで、折り鶴の「居場所」を創り上げています。改めて見つめ直してみると、折り鶴はどこか尊く、また神秘的な「なにか」がひそんでいるように感じます。そして、それはまた、私の信じている「美しさ」でもありました。ひとりひとりが自分なりの「折り鶴」との歴史を持っているかと思います。どのように感じてどのように思いを重ねるかは人それぞれですが、作品との対話を通し、心を揺さぶる「なにか」が生まれることを願っています。  小野川直樹

 

表紙作品:Sway(bottm)(top)

Creepy

lean on

Honet

下:Dawn

PROFILE

小野川直樹

Onogawa Naoki

1991.1 東京都生まれ

2016年「これまでとこれから」西武渋谷店
2019年「群青」3331 Arts Chiyoda 東京
2019年「Art Fair Tokyo」-Projects-東京国際フォーラム

【Exhibitions】
2014年「SHIBUYA STYLE vol.8」西武渋谷店 東京
2015年「現代茶ノ湯スタイル展縁-enishi-」西武渋谷店 東京
2015年「SHIBUYA STYLE vol.9」西武渋谷店 東京
2016年「SHIBUYA STYLE vol.10」 西武渋谷店 東京
2017年「Love&Peace展」 そごう広島店 広島
    「SHIBUYA STYLE vol.11」 西武渋谷店 東京

【Museum】
2019.4/18 open 「naoki onogawa museum」
〒761-4106 小豆郡土庄町字東元浜甲289-33 (MeiPAM 06)

【Public Works】
2014.11「グランツリー武蔵小杉」 折り鶴モニュメントのプロデュース
2017.2 「The Art of J」 JAL webムービー Youtube 「Privacy」
2017.9 「CHRISTIE’S Magazine」 Yusaku Maezawa
     : The record-breaking art collector 掲載
2018.3 「Journey to the World of HOKUSAI」
     – The Art of J – Exhibition in NewYork, Grand Central Terminal
2018.11「Princess Cruise」『The Secret Silk』日本初演記念 「Ao」制作

お手数ですが、お問い合わせ内容欄に必ずA21 小野川直樹と記入してください