私は、『鑑賞者と想像を介した関わりを持ち続ける彫刻』を目指して作品を制作しています。なぜなら、目には見えない物ごとを想像する『豊かな時間』を生み出すきっかけになることが、芸術の一つ在り方と考えており、そうした作品を発信し続けたいと思っているからです。そのために鑑貰者の想像を喚起する表現として造形に『空白』を用いることを意識しています。表現の一部をあえて描写しない『空白』をつくることで鑑賞者の想像力を喚起し、さらに想像されたイメージを作品に取り込むことができると期待しているからです。本展示では、ドローイングのもつ『線』の勢いや流れ、重力を感じさせない非日常的な表現から着想を得たシリーズを展示いたします。それらの作品は、空間にドローイングをする感覚で鉄線を曲げて造形することにより一つのフォルムが変化する途中を表現し、より時間の流れを意識した『物語性』のあるイメージを想像してもらえることを期待した作品です。ぜひ、作品のフォルムから自由に想像を膨らませてみてください。