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D9 ルリユール工房 池袋コミュニティ・カレッジ 文化としての製本

ルリユール(フランス語 reliure)という言葉の意味は、もとは「本を綴じ合わせること」ですが、「工芸としての製本」も意味します。西洋では古くから、麻糸で綴じ、表紙に主に布・羊皮紙・革(仔牛、山羊、豚など)を用い、装飾を加えて美しく仕立てるルリユールの伝統があり、現在でも知的な趣味の一つとして世界中で楽しまれています。紀元後まもなく冊子体の本が登場し、以後長く続く製本の歴史が始まりました。本といえば聖書であった頃は、教会やごく限られた所有者によって、宝石や象牙彫刻などを用いて神の教えにふさわしい豪華な装飾が施されました。15世紀になるとイスラム文化圏から伝わった金箔押しで表紙を装飾するようになり、グーテンベルクの活版印刷術の発明後は、より多くの人々が本を手にして、本の所有者の好みに合わせて製本・装飾する文化が発展しました。17世紀には、マーブル紙や糊染め紙などの装飾紙が見返しに使われ始め、後に表紙にも使われるようになります。19世紀には製本用クロスが開発され、産業革命のなか、大量に簡略に作ることのできるくるみ製本が普及しました。製本の機械化が進むにつれて、産業的な製本と工芸的な手製本の道は分かれていきます。18世紀に広まった愛書趣味に対応して工芸製本が制作され、アール・ヌーボーやアール・デコなどの文化的高揚を経て、個人の製本作家が活動するようになりました。日本における西洋式の製本は明治初期に輸入されたのが始まりですが、それは初めから、産業的な大量に作るための製本でした。初期は手作業が多かったものが次第に機械化され、現在に至ります。日本で工芸的な製本が親しまれるようになったのは1970年代のことでした。日本のルリユール作品は、世界中の製本作家たちとの交流を通じて高い評価を得ています。インターネットとペーパーレスの時代である現在、音楽でLPレコードが再び脚光を浴びているように、形ある「もの」として大切な言葉を残すこと、生涯の心の支えになるような「愛蔵書」を自分自身で作るということに、新たな価値が認められています。

「ルリユール工房」は1980年、栃折久美子氏により池袋コミュニティカレッジの中に創設されました。かつて編集者であり、のちに装丁を手がけることになった栃折氏は、自身の仕事のルーツとして、ヨーロッパ伝統の工芸製本をベルギーで学びました。その後、フランスとベルギーで学んだ仲間や、氏の元で研鑚を積んだ仲間たちと共に作ったのがルリユール工房です。ここでは西洋製本に必要な道具類を様々そろえており、ヨーロッパ伝統の綴じ付け製本を学べるだけでなく、現代の潮流も見据えた新しい形の製本にチャレンジすることもできます。

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