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F11 西武渋谷店 ユキヒーロープロレス B館5階 紳士フロア 誰かのヒーローになれる服

「誰かのヒーローになれる服」をコンセプトにしたファッションブランド、ユキヒーロープロレス。プロレスやキャラクターヒーローなどをモチーフにしたポップなデザインが目を引きます。このブランドの始まりは、スタイリストとしても活躍している手嶋ユキヒロ氏が2012年に「プロレス、ファッション、ヒーローが持ち合わせている『魅せるという力』を融合したアパレルブランド」をスタートさせたことによります。手嶋氏にとってのヒーローとは「好きな人」。そして子どものころの夢は、プロレスラーになり、ヒーローとなることでした。そんな想いを秘めながらスタイリストとして活躍する中、「日本のヒーローは変身する」という発想を得たことで、「ユキヒーロープロレスの服を着ることでポジティブな方向に心が変身してくれるといいな」という考えを込めたモノづくりをしています。プロレス、ヒーロー、ファッション。一見、それぞれが違うように見えるカルチャーですが、どれも私たちに勇気を与えてくれる大切なものです。【2021.9月記】

古代ギリシア神話から、物語の主人公として登場してきたヒーロー。近・現代では、悪の行為を正す勧善懲悪の象徴として人々を熱狂させます。これは、スクリーンやテレビ、マンガなど私たちが楽しむ娯楽の中で大きなコンテンツとして浸透しています。また、その時代によって憧れのヒーローは移り変わってくため、ヒーローについての話題は、同世代間での会話に親近感を生んでくれたりもします。そんな「ヒーローのような憧れの存在」は、不安なことが多い現代にこそ必要なのではと感じさせてくれます。

プロレスはもともとイギリスが起源とされ、19世紀初頭には興行も始まりました。現在のエンターテインメント色が強いプロレスの原型は19世紀後半にアメリカでサーカスの出し物の一環としてはじまった「カーニバル・レスリング」だとされています。1880年代には、劇場などの常設施設で開催され「プロレス・ショー」「アメリカン・プロレス」と呼ばれるようになります。この興業の仕組みは日本やメキシコ、カナダにも普及していきました。日本での人気が沸騰したのは戦後の力道山ブームが起因です。戦前から親しまれていた剣道や柔道などが戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の手で一旦禁止となり、その一方でプロレスが奨励されました。そしてテレビ放映の始まりとともに、力道山は戦後復興の中で「ヒーロー」となっていきました。同時にプロレスは「プロ野球」や「アメリカ製ホームドラマ」とともに貴重なテレビ番組の一つとなり、全国にブームが広がっていきました。このブームは漫画タイガーマスクなどの人気とあいまってさらに高まり、数々のヒーローを生み出してきました。

代表商品のひとつ「mascara contra cabellera(マスカラ・コントラ・カベジェラ)Tシャツ」。タイガーマスクなどに代表される覆面レスラーは、素顔が見えないことで神秘性が増し、時にはヒーロー、時にはヒールとして、多くのプロレスファンを熱狂させてくれます。また同時に覆面をかぶることで、キャラクターになりきることもできます。覆面レスラーにとっての大一番に行われるのがメキシコから波及した「マスカラ・コントラ・マスカラ=覆面をかけた試合」(敗者は素顔を晒す約束で行う試合)です。また、覆面レスラーと素顔のレスラーでは「マスカラ・コントラ・カベジェラ=それぞれ覆面と頭髪をかけた試合」があります。お互いの大切なものを賭けあった試合は、観るものにいつも以上の熱狂を与えてくれます。このTシャツは、長い頭髪を自分で好きなようにハサミで切ることができる、遊び心に満ちた逸品です。

特徴的な図柄が目を引く一枚は、手嶋氏本人が構成を考え、イラストレーターが仕上げたオリジナルです。日本のプロレスファンには、おなじみの「毒霧」は海外でも東洋独特のギミックとして認知されています。また、図柄を縁取る刺しゅうは、よく見るとダンベル柄になっています。これは20世紀中盤に「プロレスの神さま」と称されたカール・ゴッチの「ゴリラはこんなもの使わなくても強いだろ!」といった考えに基づくダンベル嫌いに対しての洒落となっています。ひねりのあるデザインと刺しゅう技術があいまった逸品です。

手嶋ユキヒロ氏にとってモノづくりのヒーローは、日本各地の生地や染めや刺しゅうなどに関わる生産者の方々です。生産者の方々のもとを足しげく訪れ、コミュニケーションを深めることを大切にしています。生産者の方々から生地の特性や染めの方法などを教えてもらうことで、デザインだけ奇をてらったのではないモノづくりをしています。また、日本各地の様々な生地、一つひとつの特性を活かす工夫もしています。たとえば和歌山の織物は、その軽さと滑らかさが特徴です。しかし、そうするとバックパックが普及している現代では、肩口と後方の裾に毛玉ができやすくなってしまいます。そのため、和歌山の織物でTシャツを作成する際は、袖付けを若干落とし、肩口や裾にゆとりを持たせてつくっています。素材の特性を最大限に活かすためにも、「Tシャツひとつでも生地によって型紙(パターン)を変える」ように配慮されたモノづくりです。そして手嶋氏いわく、「ユキヒーロープロレスは『各生産地の職人さん』というヒーローに支えられている」とのこと。よいモノづくりとは、コミュニケーションが生む信頼関係の改善の積み重ね、そして各々への敬慕の気持ちが大切なのだと感じさせてくれます。

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